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◆クリープハイプ・尾崎世界観の世界その2,小説「祐介」キラキラと才能がこぼれている!

いつから小説の中に性描写が過剰になってきたのか、もしかしたら

村上龍の『限りなく透明に近いブルー』あたりからですかね~。

ただそれはエロくないですが、私は余り良しとはしません。

この小説もそういう描写が多く、

しばしば途中で読むのをやめようとしたのですが,

まあ、それはそれとして。

尾崎世界観氏の名前の<世界観>は、

尾崎君が周囲から、君の曲は世界観がある、と度々言われるのが嫌で、

わざと名前を世界観にしたとのことです。

そうしたら世界観がある、と言われなくなったそうです。

が。

彼の小説「祐介」には、世界観はありません。

あるのは、

閉じられた個の世界。

まだ世界への小穴すら開いていない、

プリミティブな少年のきわめて狭小な個の世界です。

傷ついて、屈折し歪み、くたびれて、ギターと音楽の鎧の中に籠り、

人間の属性である性の世界からしか、他者と繋がれず、

つまりセックスと暴力を通してしか他者と繋がれない、

閉じられた少年の世界です。

しかし、ところがですね、その少年は或る時、京都のライブに出た後、

泊るところがなく、仕方なくそのライブの客の女のところに泊り、

関係を持ちます。しかし帰ってきたその女の情夫に半殺しにされ、

身ぐるみ剥がされ、はだしのまま、外に放りだされます。

かれはゴミ箱を漁り、スーパーのビニール袋を靴にして、とぼとぼ

歩き出しますが、そこから現実と幻想が錯綜していきます。

この小説は、そこからが素晴らしいのです。

世界観などという、

手垢のついたありきたりの世界ではないところこそが初々しく、

その何も整理されていない青年の未知の闇の世界こそに

意味があるのです。

話を戻します。

身ぐるみ剥がれ打ちのめされた少年のそこから、

主人公の人としての風穴があいていきます。

メタルのように固く、強固に凍結していた感情に穴があいていくのです。

無垢の子供の頃の感情が、あどけない思いがそして、

本人が芥子粒のように黒く固く押し殺していた感情が、

ロウソクの灯のように幻想の中に錯綜していきます。

そしてそれらが凍解してゆく中で

幻想の中のもう一人の少年が救世主のように現れます。

主人公の分身であるその少年が彼に言います。

「僕たち、間違ってませんよね?」

      ○ ○ ○ 

間違ってなんかいるもんですか。

君は、その通りの君であり、

我慢してきたこと、悲しむのをやめてきたこと、

どうしようもなく悔しい現実を

そのまま生きてきたことが、間違いなんかであるものか。

頑なな心と体がほどけてきた時、

彼の中に優しさのさざ波が立ち、

抃舞(べんぶ)が起きてきます。

抃舞とは、喜んで手を打って跳ね踊ることです。

ふぁんふぁれ!ふぁんふぁれ!

ふぁんふぁれ!ふぁんふぁれ!

と。こうして物語は終わります。

           拍手!!

          <つづく!>

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この記事を書いた人

作家。映画プロデューサー
書籍
「原色の女: もうひとつの『智恵子抄』」
「拝啓 宮澤賢治さま: 不安の中のあなたへ」
映画
「どこかに美しい村はないか~幻想の村遠野・児玉房子ガラス絵の世界より~」

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