可愛そうだったな~、義経。
ほんとうに無垢だったんだね~・・・。
戦の中では神がかりのようにキラキラと輝き
政治的にはまるで子供だったと、
司馬遼太郎さんも永井路子さんも書いておられる。
ただただ、兄頼朝に認められたく、褒められたい義経しか
そこにいなかった。
今回の三谷幸喜の脚本は今までとは違い、英雄伝ではない
頼朝、義経を描いていて大変興味深い。
そしてなぜ義経を演じるのは菅田将暉君なのかは、
菅田君のあの勘の良さと軽快さはまさに義経そのものであるね。
自害する前に弁慶の戦いぶりを笑ってみている義経の胸中に
何が流れていたのかは、
言葉にはならないけれど、伝わった。
以前平泉に行き、義経自害の地で、芭蕉の句碑を見た。
眼下にはゆったりと川が流れ、その向こうには広々とした
東北の平野があった。
爽やかに風が吹き、草が揺れるそこは、
まるで、何もなかったかも様に、黙り込んだ風景であった。
頼朝という稀代の政治家と後白河法皇というバケモノ権力者に
翻弄された小さな魂が、
笑いながら死んでいったとしたら、
義経はその自分をしっかりと抱きしめて死んでいったと
わたしは思いたい。
菅田君の義経で、始めて私は、義経を人間として、尊敬し、
そして悼む。
そういう生き方しかできなかった義経を悼む。

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