もともとは、四足歩行であった人間が、二足歩行になった事で子宮が圧迫され、
他の動物にくらべ、ただ寝るだけしかできない未熟のままの子供を産む事に遠因があると考えています。
つまり人間の子供は、他の動物に比べ親との生育期間が長く、密着期間が延々と続いてしまいます。
乳児から青年になるまでの20年間を、ベッタリと親の管理下で過ごします。
その間ずっと、親の感性、感覚、考え方や価値観、思想などが、
シャワーのように、子供に注がれ刷り込まれていきます。
また子供の側から言うと、親に密着依存していないと、
自分が生きられませんから、
子供は無防備に親に同化していきます。
他の動物はサッサと親から離れて独立、自立していきますが、
人間だけが親との分離がなかなか難しいのです。
つまり、◎感覚的に、
自分と他人との境目がはっきり掴めないのです。
また、心理的にずっと親に依存して生きて来た子供にとって、
親と分離して未知なる社会で生きることは不安で仕方ありません。
昔は子供も一つの労働力でありまた、稼ぎ手の一人として早く自立しましたが
現代の豊かな社会では、
むしろ親の方が子供を囲い込んで密着していますから、
当然子供は分離不安を抱えながら生きています。
それが他者との間でも投影されて、
しまいます。
ほんとはね、サッサと親から離れ、
親を乗り越え、
社会でチャレンジし、経験を積むことで、分離不安は解決していきますが、
現代人は、常に無意識の深層心理に、
親や他者との分離不安を抱えながら生きているとも言えるのです。
つまり不安と孤独を抱えて人間は生きているのですね。
だから集団の中での一体感が心地よく、
他人との同一性に安心するのですが。
ところが、脳の観点からみると、
世の中に一つとして、
一体の人も、同一の人も、
いません。
勿論、親との一体も同一もありません。
みんな、それぞれが、それぞれベツモノの自分の脳の中を生きています。
と言う事は、
一体も、同一も、全て幻想で、蜃気楼である、という事です。
※人間の脳の一つの問題性は、脳が作り出す幻想世界です。
これについては、後日書きたいと思います。
そういう冷厳な事実を受け止められない人々が、
大衆として群れ、一体感を求め、
同一だと錯覚して、心理を安定させようとするのです。
そして、
もともと分離不安の人々ですから、
一体感を求め、益々満たされようと、どんどん密着が強化していきます。
それがいつの間にか、自分達とは密着しない異質な人間を排除し、
その熱狂がファシズムへとなってゆくのですが、
困ったものです。
逆に知性や知能が高くなればなるほど、
人間が断絶している事が分かりますから、
自分の孤独を引き受けていきます。
そして自分と他者が決して同一ではない、という実感があればあるほど、
謙虚になっていくのですね。
孤独を引き受け、
他者との距離や礼儀をわきまえて、
遠慮深くなるのです。
日本人は、歴史的にそういう文化を
作ってきたはずなのですが、現代はいつの間にか崩れつつあります。
オルテガが指摘した大衆というのは、まさにそういう深く考える知性に欠けた人々です。
そしていつの間にか、そいう人々が多数派になった時、社会がどうなるかは、
もうお分かりの事と思います。
そして現代日本の深刻な問題としてあるのが、
母子密着や父子密着や、親との共依存、ニートやパラサイトや引きこもりの
自立できない子供達です。
これらを含めて、私たちは、いかなる社会を作るのか⁈
大きな大きな課題が、目の前に立ちはだかっている、という事です。
つづく。
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