芥川と言えば、大概の人はあの険しい目つきの神経過敏そうな芥川の写真を思い出すかもしれませんが、
内田百間などによると、紳士的で親切な龍之介がいます。
もしかしたら、
芥川龍之介は、その本当の素顔を誰にも見せていなかったかもしれませんね。
彼の周囲には、彼が素顔を見せてはいけない家族がおり、
その家族の前では、端正な好青年として端座していたかもしれないと、
思うのです。
龍之介の実母は彼が生後七か月の時に精神の異常をきたし、
龍之介は母親の実家で独身であった母親の妹フキに育てられました。
この叔母は、子供の頃兄と喧嘩していきなり鉛筆で突かれて片目を失っています。
この叔母はそれなりに愛情深かったとも思いますが、
しかし一方で、龍之介はこの叔母に育てられながら、
この叔母との共依存の中に閉じ込められたかもしれませんね。
そこでは、おそらく叔母の深層の陰も龍之介に渡されたかもしれません。
龍之介が結婚してからも叔母さんは、そのお嫁さんにしつこく龍之介の事を逐一聞き出そうとします。
生後七か月で母親の実家に引き取られらた龍之介は母親の死後、
母親の兄である叔父の芥川道章家の養子となります。
芥川家というのは士族の流れにありますからそれなりに行儀作法の厳しい家であったかと思います。
彼は決して他者に不快感を与えるような事はない、
青年だったようです。
その分龍之介は、
自分の神経を張り巡らせて生きていたかもしれませんね。
結婚して仕事上の都合から夫婦は実家を離れ、鎌倉で過ごします。
この鎌倉で過ごした1年こそが最も幸せであったと、
奥さんの文子さんが言っています。
さて、芥川の作品を50数年ぶりに読みました。
「父」「杜子春」「蜘蛛の糸」「トロッコ」など、殆ど高校生の頃に読んだものです。
ただ今回作品を読んでみて気がついたのは、
芥川龍之介はとても気の優しい青年ではなかったろうか、という事です。
特に「父」などには、
おとなしい無口の少年像が浮かびますし、それと伴に、
これらの作品の主人公達は、まるで等身大の龍之介ではないか、ということです。
書き手の幼なさや純真さが、
そのまま主人公を超越する事なく、
書かれていると、
思いました。
龍之介が、
作家としては若いために、
彼の理知がそのまま書かれているのですね。
逆に漱石などは、登場人物達を超越し第三の人物として書きての漱石がいます。
そしていよいよ漱石が誉めたという「鼻」と「芋粥」読みました。
そうしたら、
この二つの作品にある共通するものが見えてきました。
それは次回かきましょう。
つづく。

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