身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ
今の世の中にはびこってしまった、いじめ、パワハラ、うつ病、自殺等は
インテージにおいては、あってはならないことです。
すくなくとも、社長はその責任において、あってはならないと、
答えて欲しい。
ましてや会社とはそういうものだなどとは、口が裂けても言ってはいけません。
社長は社員を守るという、
確固たる覚悟と責任をその背中を以って、
社員に見せなければならない。
2014年憲雄氏退任の時に、下世話な話で申し訳ないが、
なぜ私が何百万ものお金をかけて映画「真艫の風」をつくり、全社員に配ったか。
それはとにもかくにも、
社員へのメッセージをこめて映画を作る必要があった。
世の中のみんなが金融経済(株主資本主義)となびいていく当時の情勢の中で、
憲雄氏ひとりがそれに反対した。
しかし、ことは憲雄氏を排除して進められ、
憲雄氏はすべてが終わってから知らされた。
憲雄氏、為すすべもなく落ち込む中、私は、
彼がひとりで社内で戦う事の不毛さを思い、考えぬいた末、
とにかく種だけは撒いておき、10年待とうと決意し、
彼に映画を作ることを進言した。
10年待てばきっと、
世の中の人々は株主資本主義の間違いに気付くであろうと。
そして憲雄氏の映画を撮り、退任の記念として、全社員に映画のDVDを配った。
それは決して田下憲雄への感傷的な思いでもなく、もちろん執着でも、自己顕示でもない。
ひたすらインテージの将来を思う、憲雄氏の社員への、
最後のメッセージエールでとして配った。
以下は会社がホールディングス化された憲雄氏の無念の言葉です。
「これからインテージは
・普通の会社になってしまう。
・経営と現場が分断されていき、
・株価が優先され、
・現場は業績に左右されて苦労するだろう。
・次々と社員がやめていくだろう。」
更に「社員はどうなるの?」という私の問いに対して、
「社員が散りじりになる」
そして、「会社も散りじりになると答えた時の、
悲しそうな目は忘れられない。
私もショックを受けた。
人間とはいかなるものかの哲学のもと、
人間が真っ当に生き働く場こそ、
インテージという会社であったはずだからだ。
そして、戦前の財閥と同じシステムである持ち株会社の、
経営が、権力を持ったら当然、
現場場押しつぶされて行く。
憲雄氏も絶望したと思うが、私も絶望した。そして
社員全員の汗と思いで築きあげた、
「人」が大切にされる30年の企業文化を、
消されてたまるものかという憤りが湧いてきた。
だからインテージの企業文化を
風化されてなるものか、という思いを込めて、
「真艫の風」という映画を撮った。
M氏に気取られないように、家族の物語りにカムフラージュして作った。
更にCWニコルさんにも魔の手が及ぶと思い、ニコルさんにも出演をお願いした。が、
案の定、ニコルさんはすぐ切られた。
ニコルさんは憲氏に、自分がいたらないせいで申し訳ないと、頭をさげられた。
それを傍で見ていた私は涙が溢れてきた。
そして10年間待ち、
世の中がやっと金融経済(株主資本主義)の誤りに気付いてきた今、
「会社は社員を犠牲にしない」と言う憲雄氏のメッセージの本を出版した。
だからHさんが、
その本にクレームを付けてきたとき、その安直さに、
私は激怒した。
この本は、憲雄氏の退社時の深い無念さ、そして何よりも社員を愛してた憲雄氏の思いの本であり、
持ち株会社になったことで、
社員を守るという責任を果たし終えなかったことに対する、
社員への詫び状でもある。
つまり憲雄氏が、
どうしても社員に伝えなければならないことが書いてある。
1974年の労働争議で戦った社員たちが、
莫大な借金を抱えて、しかも薄給の会社をやめず、
懸命に働き、
そこから30年かけて築き上げていった、
魂の結晶でもある企業文化が、書いてある。
その大切なものを残しておかねばという田下憲雄の
渾身のメッセージ集でもある。
本当にこの本のメッセージの重要性と、その重さを分かっていたならば、そして思慮深いなら、
軽々しく介入などできないはずである。
残念ながら、ことの重大性が、
分かってなかったんだね。
そして、10年間待つ間に憲雄氏は、
とうとう脳腫瘍に冒されてしまった。
そこから宿題はズシンと重く私の手に渡され、
そこから、私のたった一人の戦いがはじまった。
本を出版し,憲雄さんのYouTube動画と映画を撮った。
なぜなら、私はこの問題を解決せずにあの世にいくわけには行かないからね。
そして憲雄氏に、いよいよ最後の時がきた。
◯
憲雄氏退任時の小冊子と「真艫の風」には、こう書いている。
「後ろからの風に目いっぱい帆を張り、波を切って前進する船の姿を連想することさえ可能だ。時々、横波にぶつかるが、
船頭が大きな判断ミスをしなければ船はどんどん目的地に近づくことができる。」
船頭がミスをしなければ、社員みんなの総力で目的地に着くはずだ。
社長(経営)は、会社の成長のために社員を犠牲にしない、というインテージ文化への気概を忘れないで欲しい。
◯
最後に、
社長が全霊で社員を守るなら
社員も社長を守れ!
そして、
会社の経営も現場も、
全員が信頼し合い、助け合い、これからの困難な時代を生き抜いてください。
◯
今日憲雄氏を火葬しました。
たなびく風に乗ってその煙はどんどん空へ上り、
もう元素になった憲雄君が、
きっと君らを、
みている。
田下啓子


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