漱石をすごいと私が思うのは、
小説として、
その物語が結果的には、
現象を語っている、ということです。
多分漱石の立ち位置がすべての登場人物達と等距離であり、
感情移入が少ないこともあるかもしれませんが。
漱石は、
人間の苦しみは世俗的な人間関係ではなく、
その人間の脳と身体におきてくる、
感情や欲望を含めた
頭の中(脳神経現象)にある、
という見解を持っていたのではないかと、思います。
当時は脳科学などありませんから、
漱石はその明晰な観察と分析力を以て人間と社会(世の中)を見ながら、
漠然とそれを掴んでいったと、私は思います。
だから小説の筋よりも、
登場人物の心理と行動の、
分析の方に彼の筆がシフトしています。
漱石以外の作家達は、
感情や欲望の展開、
小説のストーリーやロマンの方に、
シフトしています。
つまり、人間関係や世俗のあれこれを書き、
それによって起きる、
私情的な或いは心境の葛藤の世界を描きましたが、
漱石だけが、
遮断なく起きてくる脳神経世界を描き、自分を分析、解体しながら書きました。
頭の中(脳神経)が、
外界に反応して起きる現象の中に、
避けようのない人間の苦しみや不幸の原因があることを、
理解していったのだと思います。
それこそが、人間とはいかなるものかに対する、
普遍的な解答でもあるのです。
今ほど科学や物理が発達していない時代によく追及したと思います。
それを理解したが故に漱石は、
どんな人間の人生にも避けがたい苦しみがあるという、
人間に対する大きな抱擁力の世界観まで到達したと、私は考えます。
その意味では途中で終わっている遺作「明暗」の最後を、
漱石がどう書こうとしたかが気になります。
そしてもう一人、
人間は現象であることに気づいた人物がいます。
そうですね、
あの宮沢賢治です。
次回は宮沢賢治のことを書きます。
お楽しみに!

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