以前、芥川龍之介の自殺について,坂口安吾が書いたものをご紹介しましたね。
それは芥川がある農民作家から,農民の本当の現実を知らせれる事により、
自分が文学として書いていた事が,いかに人間の表面を撫でただけにすぎない綺麗事であり、
自分の文学の底の浅さに気がついてしまい、
彼は自分の足場(アイデンティティ)を失ってしまいました。
アイデンティテを失う。
これは、本当はものすごい恐ろしいことで、
私自身も経験があります。
まー私自身のそれは,芥川ほど深刻ではなく、やっとかっと自分を支え、
微かな自分の存在価値のかけらをさがしながら、日々,自分を立て直しました。当時、
いつも頭をよぎるのは、死んでしまいたい,という願望でした。
さて、私が何を言いたいか,というように、
日本と日本人のアイデンティティが崩れてしまう事の恐ろしさです。
私は知らず知らずのうちに、そうなっているような,危機感が私にはあります。そして、
もう既にそれを失い、足がなく浮遊している人々もたくさんいます。
いや、若者に蔓延している
・自分探しや
・自己認知を求め、
そこには中身がなく、確かな自己認識の実感もなく、
社会に流されて,浮遊している若者たちがいる。
どうしたらいいか。
ただね、私達人間は、ポツンと空気の中に産まれだ訳じゃない。
私達は周囲との関係の中に産まれてくるのですね。
親や兄弟や地域の人間関係や、また、その土地の風土や環境や、
さまざまな関係の中に,ある遺伝子を持って産まれてくる。
そしてそこから、私達の人生が始まり、
そしてそこから、自分という小宇宙がつくられ始めるのですね。
つまり、自分が産まれた環境や、関係性が、穏やかで、心地よいか、
或いは、刺々しい最悪なものか、
それは、人それぞれですが、
まずそういう環境と関係性の中から、
私の、あなたの物語が始まり、
そこから、あなた自身があなたという人間の中身を作り始める,ということなのです。
そして年齢が低ければ低いほど,中身は未熟で、データ不足であり、
私達は、自分の経験知を積み重ねながら、少しずつ、
自分の世界が形成されていきます。また、
その経験知から、自分の生き方も、選択されていきます。
その時まず大事なのが、自分の土台がある、という事なのです。
よくも,悪くも、自分の土台があり、
それを叩き台にしながら、人間は生きてゆく。
だから、自分とは何か,という事は、
自分は、
プロセス中の自分なのですね。
不安定であり、不確かであり、データ不足であり、
新しい環境に行けば、何がなんだか訳がわからなくなるのは、
当然のことなのですです。
※新しい環境とは、言うなれば親の保護下からでて、違う環境に入る、ということです。
ところが、頭でっかちになった現代人は、
先に、自分の世界があるように勘違いをする。
だから、自分探しなんて、
ないものをねだり、探し、掘り当てようとする、
そして、
いつまでもたつても、不毛な中をさまようのです。
更にいうと、自己認知は、常に
自分の限界を、知らしめされることであり、
自分の限界を知る、ということこそが、
ありのままの,リアル自分をしつかり見ている,
自覚、知覚、している、ということです。
その未熟で、若ければ若いほど、限界だらけの自分を、
他人から承認,認知されたいなんてのは、
甘えも甘えの大甘ったれなんですね。
しかし、現代の日本は何から何まで
甘くなってしまいました。
だからなんだかわかんないけど、
本当は,生きることは厳しい現実を逞しく生きることであり、
その厳しいと現実を生き抜く為には、
よほどの精神力や、
現実を見極める<知力>が必要であるのですが、
そう言う認識が、否定されてしまっています。
ただね、これからは、
もーとてつもない現実に、
日本は晒されていきます。
その時にですね、私達は何も無い,或いは,土台がないか,というと、
そうじゃないのですよ。
本当は何もないようにみえる私達の周囲,空間には、
日本,という文化と歴史があり、伝統があり、
実は、
私達の無意識の文化,知性を
構成しています。
いくらアホ親に育てられても、
私達の周囲には、
いかにも日本的風景や光景や,
日本的行事や日本的習慣,
日本的観念が、
良くも悪くも、あるでしょう。
私達は,土台がない訳じゃ〜 ないのです。
戦後、日本は自信を失い、自己否定ばかりが流行ってしまいました。
更に経済的,経済と,いつの間にか、拝金主義に陥ってしまいました。
そしてまるで,番頭さんかなんかのようにG7の端っこに立って、
西洋、アメリカの中で、
世界の金融経済の中に,取り込まれてしまいました。
いつの間にか、いかにも空っぽのような日本と、日本人になってしまいましたが、
これからくる世界の難局や、修羅場を、乗り越えていくには、
日本が確固たる日本の知性と、文化を取り戻すことだと、私は考えます。
今、なんか分かんないけど、小林秀雄のことが映画になったらしいけど、
いいチャンスです。
若者達よ、小林秀雄を読んでください。
それだけではなく、日本の古典を読み、良いところを、たくさん勉強して、
教養を身につけて
考える能力を磨いてください。
そしてね、文系に人は,科学を勉強してください。
反対に,理系の人は文学や心理学を勉強してください。
これで、エマニュエル・トッドさんの本「西洋の敗北」から始まった私の考察は、終わりにします。
長い長い文を読んでくださり、
ありがとうございました。
田下啓子

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