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芥川龍之介とともに、その4素晴らしい遺作「歯車」

芥川龍之介が苦しめられたのは、

遮断なく回転する彼の脳神経です。

それは鋭く外界に反応しては

妄想を起こして彼を脅かしました。

また、彼自身の中に母親の狂気が

いつか自分にも及び、

自分も発狂するのではないかという不安もありました。

更には育てられた叔母の心理的呪縛も解けませんでした。

脳が自分の意志とは別に、

遮断なく回転し反応する事については、

漱石も同じように苦しめられました。その事が「行人」にも書かれています。

漱石はそれでも自分を突き放し、

客観的に検証する精神力をもちましたが、

龍之介は次第にそれに飲み込まれていきます。

漱石は自他の分離がしっかりとできていましたが、

龍之介はまだまだそれが不十分であり、 

養子家や伯母は勿論、

他者と自分の境界線ゾーンが甘かったように思います。

それを示しているのが遺書の長舌さです。

自他の分離ができ、他者と自分の違いが明確になればなるほど、

他人からの承認は必要なくなります。

他人は自分とは全く別の違和世界を生きている事がわかりますから、

それを求めることがナンセンスだとわかるのです。

しかし遺書があれほど熱心に書かれているところをみると、

人間や社会に絶望しながらも、

龍之介はやはり心のどこかで、

自分が理解される事を望んでいたように思います。

もし漱石がもっと長生きしていたら、彼は自殺しなかったかもしれませんね。

きっと漱石がその甘さを指摘したでしょうから。

彼が自死を選んだもうひとつの原因はもしかしたら、

心理不安による不眠症ではないかと私は推察します。

勿論さまざまな要因が重なったのでしょうが。

心理不安による不眠症は、

頭の不安だけではなく、

身体が不安定になるのです。

その身体の不安に怯え、その辛さに耐えきれず、

次第に死へと願望しだしたのではないかと思います。

この身体が不安定になるのはとても辛いです。私も経験ずみです。

また、

脳と身体がそのようにシステム化してしまうので、

ほんのちょっとした気分の落ち込みでも、

身体が耐えられない不安におそわれます。

頭の遮断なき回転により、 

脳が鋭敏に反応し続け、

心が休む暇がない。

次から次へと

妄想が追いかけてくる。

そんな中を

必死で生きた龍之介ですが、

ただね、

そんな不安定な中で書かれた遺作「歯車」は、

素晴らしいです。

ある種デモーニッシュでメタリックな美しさがあります。

この渾身の作品を

きっと漱石先生も、

褒めてくれると

思います。

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この記事を書いた人

作家。映画プロデューサー
書籍
「原色の女: もうひとつの『智恵子抄』」
「拝啓 宮澤賢治さま: 不安の中のあなたへ」
映画
「どこかに美しい村はないか~幻想の村遠野・児玉房子ガラス絵の世界より~」

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