AIデジタルテクノロジー時代に入るにつき、
私はこの大きい文明の転換期については、
二つの重大な問題があると、考えています。
一つは、この文明は果たして人間(人類)を幸せにするのだろうか、という疑問。
とりわけ 世界でAI事業を主導している人達が、
どれだけ人間についての深い認識を持っているのかが、甚だ疑わしい。
彼らの知性や人間的成熟にかなりの疑問を持っているから、です。
余りにも,軽率に,軽薄に、事が進んでいくのに、危険を感じます。
もうひとつは脳の観点から、人間の脳の劣化,
特に身体からの感覚,体験入力が減り、人間の知能が劣化していくのではないか,という疑問です。
イーロン・マスク氏はシンギュラリティが起きた時の AIの暴走を心配していますが、
私は、身体や脳を使わなくなってしまう人間の知能の劣化を心配します。
自分で考えなくなる人間の知能の劣化です。
このままだと汎用性 AIはあっという間に世の中に浸透していくでしょう。
その時普通に思い当たるのは、
人間が職を AIに奪われるのではないか、という事だと思います。
当然そういう事もおきうると思いますよ。
しかし一番深刻なことは、
人間が壊れていく事ではないかと、
私は考えています。
本当はこういう文明の転換期こそ、
AI社会を推進していこうとする人間達は、
単に脳科学や科学的テクノロジーの観点からだけではなく、
人間に関するありとあらゆる学問知見を総動員して,
それが人間が幸せになる社会かどうかを
検証しなければならないと思います。
科学だけではなく、生物学、動物学からも、
また、心理学や社会学や哲学,
思想学、文学、芸術その他、
あらゆるところから、
考えうる限りの観点からの、
人間と文明とを検証することが
必要です。
それが殆どなされず、
AIテクノロジー社会へと爆進していくのは、
とても危険だと思います。
よく経済で使われる言葉に、
「合成の誤謬」というのがあります。
意味は、
みんながよいと思い込んで,同じ方向へと進んでしまうが、
結果は、思いがけないリスクや
悪い結果を招いてしまう、という事です。
いわば大衆社会の最も悪い現象です。
イーロン・マスク氏が作ろうとしているAIロボットも、
自動運転のタクシーや自動運転トラックも、
また脳に電子チップを埋め込む事も火星への移住も、
それなりの効力があるでしょう。
しかし余りにも性急,拙速に、事が進み,
その経済に私達が組み込まれていくのは危険です。
今こそ立ち止まって、
人間に本当に必要なのは何かを
考える必要があります。
世の中や,世界の流れに流されず、
しっかりと考える必要があると、
私は思います。

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