MENU

関ヶ原 4 それではお約束どおり、芳春院まつさんと、北政所寧々さん、見性院山内千代さんについて。

私は無類の京都好きで、以前は毎年京都に通っていました。

そりぁー二千年の都ですから、観光も奥が深いです。

中でも寧々さんの高台寺が大好きで、その枯山水の庭を見るたびに、

私の生き方の大先輩として、いつも力を貰いました。

いかにも男性的な岩がゴツゴツと積み上げられている枯山水こそ、

寧々さんの過越してきた厳しい人生を象徴的に表しており、私は心打たれます。

ちょっと解説をします。

絵画分析でいいますと、岩はその人間の人生の障害となったことを表します。

初めて高台寺の枯山水を見たとき、

私は、あまりにもたくさんの岩が積み上げられ、ダイナミックではありますが、殺伐とした枯山水をみて愕然としました。

そして一目でわかりました。

あー寧々さんの人生は障害だらけであったんだ、と。

苦労したんだなぁ〜と思いました。

      ◯

関ヶ原が始まる前に、どんどん権力を握った家康は、

それ迄の居城であった伏見城から、

権力の中枢を意味する大阪城へと進出を画策します。

ただ大阪城の本丸には秀頼と淀君がいますから,退かすわけにはいかない。

それでハタっと膝ついて思いついたのが、

西の丸には寧々さんが住んでいる事です。

おー寧々さん北の政所だったら、事情を話せば、どいて開けてくれるじゃろうと、

小田信長の弟でもある、小田有楽斎を使者にして交渉します。

すると寧々さんはあっさり、いいよ、と京都に引っ越して行きました。

つまり寧々さんはとっくに豊臣政権には見切りをつけており、

次代の長は家康だと見極めていたのだと思います。

夫秀吉の一部始終を醒めた目で眺めていた寧々さんは、

これ以上秀頼、淀君と

心中するつもりなど毛ほどもなかったのですね。

賢い女性です。

この寧々さんと、秀吉がまだ足軽時代に隣どうしに住み仲良くしていたのが、

加賀前田利家の妻、まつさん(芳春院)です。

まつさんも賢いですよ。

まつさんは、夫前田利家が亡くなり、

家康がいよいよ天下を取る為に、

石田三成を退治しようと画策し、

まず加賀藩が謀叛を起こそうとしていると言う嘘をでっち上げます。そして、

それが真実ではない証拠であるとして、まつさんを人質として江戸に差し出すよう要求します。

利家亡き後であるゆえに、加賀藩は動揺し、

父利家の大老職を引き継いだ息子の利長はどうしていいか分かりませんが、

まつさんだけが家康の本当の意図を見抜いていきます。

つまり家康はまつさんの聡明さを通じて、

これから天下分け目の大戦さがはじまりますが、

同じ豊臣の大老である加賀藩は,

ちょっと動かないないでくれますか。

その為に江戸に人質としておいでくださいという、暗喩だと、

見抜いたと,私は考えます。

つまり,徹底に三成を潰そうと言う腹の家康にとって,同じ格の前田家に出てきてもらっちゃ困るのです。

つまりのこのこ前田が割り入って、

調停などしてもらいたくないのです。

そして

まつさんが家康の人質にされている限り、前田家は、家康とは戦わない面目がたちます。

まつさんは、家康の真意を見抜き、

よろしゅうござんす、と自ら江戸にいきました。

そして関ヶ原の後、加賀は加増されて、

⭕️加賀百万石になるのです。

これは私の勝手な思いこみですが、

寧々さんとまつさんと家康は、

どこか気脈が通じていたように思います。

ただ次男の利政は西軍(三成側)についてしまいます。

それがなぜなのかはわかっていません。

関ヶ原終了後にまつさんは、利政の釈面を嘆願しますが、家康は許しません。

兄利長の言う事をきかなかった利政を許さないのです。

利政は嵯峨野に隠棲し、文人、趣味人として最後を送ります。

もしかしたら利政はその方が幸せだったかもしれませんね。

そしてもうひとり,山内一豊の妻,お千代さんがいます。

お千代さんは、夫に対する内助の功で有名ですが、

山内家も秀吉が木の下藤吉郎時代にその傘下にはいり、やはり寧々さんまつさんのご近所さんでした。

山内一豊も、上手に戦国の世をくぐり抜け、関ヶ原の後は土佐の藩主になります。

お千代さんもどこか達観した素敵な女性です。

彼女には一人娘がいたのですが、地震の事故で失います。

その後捨て子を拾い「お拾い・おひろい」と名づけて育てます。

そのおひろい君が成長すると、一族の醜い跡目相続に巻き込まれないために出家させ、僧侶として修行させます。

そして一豊が亡くなった後はおひろい君(湘南宗化)がいる京都の妙心寺の近くに引っ越して、

親子が寄り添い余生を暮らしました。

寧々さんも、まつさんも,千代さんも、どこかサバサバとして自己執着を捨てたところがあります。

私もいちおうフェミニストを自認していますが、

いわゆるとんがって男に対抗するフェミニストではなく、

戦国の厳しい時代に、

⭕️男とは別の次元で生きる、むしろ

男を超越すらしてしまうリアリストとして、

この三人の女性達が、

大好きです。

あの枯山水のように厳しい障害を乗り越えてきた寧々さんも、

男よりも強い精神力で修羅場を乗り切ったまつさんも、

そして最も大切なことを熟知し,ささやかな幸せを選んだ千代さんも、

皆んな私の憧れです。

さあーそれでは、家康とはどんな人物であったかを、

次回,最終回に書きます。

       つづく。

※おかげ様で、やっとインフルエンザを脱しました。

7日間の苦しい戦いでしたが、この原稿を書きながら,超えました。

写真は2階に隔離されたので、撮るものがなく、部屋の隅を撮りました(笑)

ありがとうございました。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

作家。映画プロデューサー
書籍
「原色の女: もうひとつの『智恵子抄』」
「拝啓 宮澤賢治さま: 不安の中のあなたへ」
映画
「どこかに美しい村はないか~幻想の村遠野・児玉房子ガラス絵の世界より~」

コメント

コメントする