晩秋 萩原朔太郎
汽車は高架を走り行き
思いは陽ざしの陰をさまよう。
静かに心を顧みて
巷に秋の夕日散り
鋪道に車馬は行き交えども
わが人生は有や無しや。
煤煙くもる裏町の
貧しき家の窓にさへ
斑黄葵の花は咲けり。
※斑黄葵はゼラニウムのことです。
若い頃からなぜかこの詩が好きでねー。
若干感傷的でもあるが、まるで私自身の中に潜む原風景を
朔太郎が突き止めてくれたような気がしていた。
この詩ともうひとつ大好きな詩があり、それは長い。
長いけど明日書けたら書きましょう。
その詩とこの詩は、
「美しい」とは何か、ということを
対をなして私に教えてくれた。
「美しい」そのひとつは生きざまの美しさです。
そして明日書こうとしている詩に
官能の美しさがある。
ひとつは「静」の理知の世界で、
もうひとつは躍動する「動」の世界で、
朔太郎が美しい言葉で語りかける。
深い。
その深さを掘り進んだところにある
広い世界。
官能とは何か、明日、
書きます。
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