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◆シリーズ11、ドストエフスキーの愛の世界と漱石の<則天去私>の世界!

その1。

初めて漱石を読んだのは、小学五年生くらいだったと思います。

「坊ちゃん」の小学生用ダイジェスト版だったように思います。

以来どういう訳か漱石が好きで、ほとんどの作品は読んだと思います。

なぜ好きなのかは、

漱石の小説にながれている温度といいますか、どこか人間的な温かさがあり、惹かれたのだと思います。

それといわゆる男のナルシズムがないことです(笑)

三島や太宰などのその他の男の作家の感傷とナルシズムに私は閉口しますから…苦笑!

ドストエフスキーを読んだのは、高校生の時です。

最初に読んだのは「白夜」という作品です。

これは高校生の私でもなんとなく理解できましたが、

次に読んだのは「カラマーゾフの兄弟」と「罪と罰」は、当時理解できませんでした。

しかし50代になってまた読み返してみた時、震えるような感動がありました。

やっと歳を経て、ドストエフスキーが何を伝えようとしたかが分かったからです。

救い難い人間の業と狂気。  

もがきあがきながらも、生きるしかない、絶望的な人間の存在。

彼が命を費やしながら書く人間の

業のその奥の奥の遠いところにドストエフスキーが何を見たか?

以来「白痴」「悪霊」「やさしい女」を読み「罪と罰」と「カラマーゾフの兄弟」は3回ほど読み返しました。

まあ、その他の作家の本も山ほどの本を読みましたが、ドストエフスキーほどに惹かれた作家は他にはありません。

そして漱石です。

歳を取れば取るほど、漱石が近づいてきます。

漱石も人間の関係性とそこに現れる心理と人間の業を描いています。 

それは抜き差しならぬ業であり、

それを漱石が追及していきます。

ドストエフスキーの躍動的で芸術的な人間の姿に比べ漱石のそれは

いかにも日本的秩序の中、漢詩的な格調の文をもって描かれていきます。

ドストエフスキーが上流から下層までの人間を描くのに比べ、

漱石は、中間のインテリ層の、ある程度教養を身につけている人間の生活を描きながら、 

人間の葛藤心理を紐解いていきます。

そこには、彼がめざした世界、

彼がどうあろうとしたか、何を伝えたかったかが、

逆説的に書かれていきます。

今回漱石最後作品「明暗」を読み返しました。

ここでも漱石は逆説的に、

人間に問いかけます。

主人公達の心はいつもすれ違います。

その為お互いに相手に対する不信を持っており、

それを探りながら自分を取り繕います。

一方では、相手に言い訳ばかりをして、常に

自分が正直になる機会を逸していきます。

そうありながら、反対に、

相手を自分の思い通りするにはどうしたらいいかと、

頭を巡らせてばかりいます。

自分が正直ではない事に、

薄々気づいているのに、そこへアプローチできない人間達です。

なぜなら、正直になったら、

事と次第によっては相手に頭をさげなくてはならなくなるし、

相手からの愛情が冷めてしまうかも知れないし、

何やらの敗北感を味わう事になるかもしれないからです。

ただね、ほんとうは、違うんですよ。 

ほんとうに相手(他者)と繋がってゆくには、正直でなければ、なりません。

取り繕う自分を、

自分の理性を以て

⭕️追い詰めなければならないのですよ。

そうして、勇気を持って正直になると、

そこには、爽快な風が吹き抜けていきます。

せいせいして、気持ちの良いことこの上なく、命が洗われます!

自分が生き返るのです。

「明暗」の主人公たちは、

いわゆる自分の業から脱出できず、

理性のトレーニングができていない人間達です。

自分の感情とエゴに負けています。

中途半端に頭が巡る、インテリ層の人間達です。その分始末が悪い。

その人間達を、まさに漱石のシャドーのような人物小林というインテリ階級から道を踏みはずした男が、

主人公達に嫌われながらも、

側からサーチライトのように彼らの姿を浮かび上がらせていきます。

お前ら社会の上っ面で生きているだろう!と。

     ◯ ◯ ◯

この人間達がお互いを自分の負のスパイラルにまきこみながら、どうなっていくのか、

残念ながら途中で漱石は亡くなってしまいました。

漱石はいったい何をいいたかったかを次回漱石が理想とした「則天去私」の

ほんとうの意味を探してみようと思います。

          つづく。

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この記事を書いた人

作家。映画プロデューサー
書籍
「原色の女: もうひとつの『智恵子抄』」
「拝啓 宮澤賢治さま: 不安の中のあなたへ」
映画
「どこかに美しい村はないか~幻想の村遠野・児玉房子ガラス絵の世界より~」

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