人間の欲望は命に原初的にプログラミングされている属性としあるものです。
生命が生命から生まれる摂理として
否応なく人間が背負わなければならない宿命の脳と身体の機能です。
仏教では「業・ごう」と名づけられました。
それは本来は弱い人間達が生き延びる為に生まれてきた欲望の脳と身体の機能でもあるのですが。
初めにはっきりと申し上げておきます。
「心」は、脳と体の働きです。
心が脳や肉体とは別の働きという考えは、
19世紀ごろまではそう考えられていた、という事です。
残念な事にいまだに19世紀頃までの知識のままの人がたくさんいます。
シリーズ4で、人間の脳には大きく二つの世界がある事を書きました。
ひとつは人間が動物であった頃の名残りの古い脳で、
辺縁系を中心にする、本能的感情と欲望の世界です。いわゆる「業」の世界です。
勿論本能的感情の中は、純粋で素直な喜びや母性のように他者を慈しむ感情もあります。
もうひとつは、人間が人間になる為に獲得した新しい理性の脳の、
前頭葉の世界です。
ここでは集団のなかで、
他者と共に生きる為の知恵や、
高い理性の感情を生み出す機能が働きます。
そして困った事には、古い感情の脳より、理性の脳のほうが、
圧倒的に弱いのです。
この事は前にもお伝えしましたね。
古い感情の脳が興奮しだしたらもう、理性は遠くへと追いやられてしまいます。
カッカし出したらもう止まらない、っていう体験をした人は、思いあたるでしょ…笑!
また母性愛の感情も、そこに溺れてしまうともう理性が働かなくなります。
反対に理性の脳は、意識的に育て、鍛えて、磨かなければ働きません。
確かに前頭葉の中には、高邁な事、美しい事感動する部位もありますし、
もともと理性が強い人もいます。
しかし、
その心を持ち続けるには、意識と意志が必要です。
意識して自分を律し、言い聞かせていかないと、ダメなんですよ。
昔の人はことわざなどで、それを共有していましたが、今はもうそれも消えてしまいましたね。
欲望的なある刺激が起こると、
瞬間瞬間に、感情と理性の二つが反応し綱引きをします。そして、どちらかに決着がついていくのですね。
日常的な小さな欲望ならなんてことはありませんが、
その欲望が拡大して、
過剰な性欲や食欲、所有欲や、支配欲や、独占欲や自己顕示欲、さらには物欲、金銭欲、征服欲、などなどなどが頭をもたげ
それらの裏側に感情が付着して嫉妬や妬みや攻撃的感情が沸いてくるともう、手に終えませんねー。
殊にそれらの感情は倒錯したある種の快感ですから、それが常態化していくと、簡単にスイッチが入るようにもなってしまいます。
理性など吹き飛んでいきます。
恐ろしいのは、それらの欲望と感情に、
人格が乗っ取られてしまう事です。
乗っ取られない為には、感情を排除して、意識的にしっかりと、
理性を使って考えるトレーニングをする事です。
そして、大変残念ですが、現代社会は、理性や知性が働くより、
目先の利益や、更には欲望や感情に乗っ取られてしまった人間が多くなってしまいました。
そういう人間がリーダーになったり、社会の表面で浮遊して発言しています。
また、それに追随する大衆もたくさんいます。
大衆そのものが、何が正しく、正しくないか、の基軸を失ってしまったように思います。
それは、何よりも経済を優先させてしまった社会が作り出した結果だと私は思います。
皆様も、日本や世界のリーダーと言われている人物達の知性の低さには、もう気づいておられるでしょう。
欲望とは自分を満たしていく世界です。つまりは彼らも所詮は自分の為でしかありません。
そういう人間が核のボタンを握っているという、とんでもなく恐ろしい事に、今は、なっているのです。
話を欲望と感情の業に戻しましょう。
自分で自分と格闘し、苦しみ抜きながら、感情世界の負の闇の扉を開けて、自分で光をいれて行かない限り、
自分の本質が見えてきません。
自分で自分の闇と光にちゃんと向き合って、初めて、
自分の本質が見えてきます。
自分の本質がみえてこそ、
そこに底流する、人間の普遍的本質も見えてきます。
自分の本質が見えてくる中で、やっと、他者が見えて来るのです。
実は、この沸き起こる脳と体の現象である「 心」を、
どう磨き上げていくか、をどんどん消失しているのが、現代です。
ほんとうは私達は、ここで踏ん張らねばならないとは考えます。
社会の文化として、
・正直さや
・誠実さや
・率直さや
・真っ当である事が、
稀薄になっては、いけないのです。
嘘、隠蔽、言い訳が罷り通る文化にしては、
いけないのです。
カウンセリングで大事だとされているのは
自分の生き方の言行が常に
自己一致している事です。
ここがねじれるとストレスが起き、
生命エネルギーが抑圧されてしまいます。
そして、
自分がねじれていると、社会もねじれていきます。
社会が薄汚れていかないように、
私達が意識して、どのように
知性の高い私達の文化を作り上げていくか。
これが早急な課題だと思います。
つづく。
※写真は青梅の甘味処「紅梅苑」で活けてあったものです。
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