もう何年、いや何十年前かと思うけど、
私の大好きな画伯松田正平爺ちゃんが、テレビの取材に応じ、
ゴミだらけのアトリエで
「僕はもう、難しいことは嫌なんだ。
ドストエフスキーとかは、もういいんだ」と言いながら
キャンバスの絵の具を、かみそりでゴリゴリはがしていました。
正平画伯の絵は、一度塗った絵の具を剃刀でそぎ落としながら、
独特なマチエールを作り出していく。でも
それがたまらなく、お洒落なのです。
それとやはり同じ山口県宇部の作家、永田松蔵爺ちゃんも
素敵でした。
私が会ったのは、銀座のはずれの奥野ビルの小さなギャラリーで
もう、ヨレヨレの着物と袴をはき、まるで明治の志士のような画伯でした。
その時サムフォールの果物の絵を買いました。
そして後日聞くところによると、新幹線に乗るお金がないので、
深夜バスに乗って帰郷したとのことでした。
もう、おそらくこういうバンカラの骨太の作家は
出てこないかもしれません。
でもね、
この二人ともの絵があか抜けて、
ほんとにモダンでした。

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