「ではみなさんは、そういうふうに川だといわれたり、
乳の流れたあとだといわれたりしていたこのぼんやりと白いものが
ほんとうは何かご承知ですか」
これはあの「銀河鉄道の夜」の有名な冒頭です。
先生のこの質問にカンパネルラが手をあげ、
さらにジョバンニも手をあげかけますが、急いで
それをおろします。
ジョバンニはあれは星だと知っているのに
先生から、指されるとはっきりと答えることができず、
前席のザネリから笑われると、もうドギマギして
真っ赤になってしまいます。
実はこれが賢治の姿ではないかと思います。
もう30年以上宮澤賢治を追いかけています。
初めは賢治の言葉に感傷的に反応して感動しました。
しかし賢治を読めば読むほどに、うっすらと
人間賢治が見えてきました。
自分は分かっている、しかしそれを
言おうとすると理解されず、逆に笑われてドギマギする。
自分は分かっている、全部見えているのに、
どうしてもそれが理解されない。
そういう失意とジレンマの中を賢治は生きていたのではないかと
思います。

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